令和4年度入選者寄稿文

古川龍慧

年はとっても、心は青春…夢は名吟士を育てること

磯釣りが趣味の私が友人のT君を誘って長崎県上五島へ釣行、渡し船が待つ平戸市へ向から車中でのできごとです。友人の車から流れる音楽にふと興味をそそられたのです。謡曲ではない、浪曲でもない、ましてや演歌でもない。“何やこれ”と尋ねると「詩吟」と言う友人、自分も学んでいる、一緒にやらないかと言うのです。
こうしてT君のお世話で職場に近い佐賀教場で岳精流日本吟院大村岳精会に入会、会員の輪の中で楽しく吟じ合い、土田精城先生に基本をしっかり学ばせていただきました。
県庁退職後は、自宅の鹿島から近い大村市へ、大浦精慶先生の下で更に詩情表現などを学び、先生の勧めでいろんなコンクールに挑戦することとなり、出場者の素晴らしい吟に学び、更に精進を決意して年を重ねています。
初めての体験には、失敗やそこに向かう努力がつきものです。財団主催全国吟詠コンクール九州地区大会へ初めての出吟権を得た時のこと。出吟者は紋付袴の正装であることとなっていました。
しかし、そのことを知らず、唯一人洋装・略礼服で出吟したのです。幸いにも入賞し東京での決戦大会への出吟権を得ましたが、決戦大会では当然、紋付袴の正装で吟詠しなければなりません。
和服なんて結婚式以来のことです。貸衣装を手配し特訓開始。本やインターネット動画を見ながら帯の結び方を練習、袴の着付けの練習。十文字もなんとか一人でできるようになりました。今では、私服をあつらえて、出吟のたびに予習をしながら本番に備えています。
コンクールでは、今までたくさんの失敗や挫折を味わい、糧にして、今に繋がっています。吟詠コンクール優勝や吟士権者認定などの経験を重ね、今年は、念願であった日本クラウン(レコード)
主催全国吟詠コンクール決戦大会準優勝(九州地区大会優勝)、日本クラウン吟友会専属吟士の認定をいただくこととなりました。
ここに至るまでには、吟詠の失敗やコンクールで入賞さえできなかった時が多くあります。そんな失敗や落胆にめげることなくここまで至ることができたのは、宮本会長、故土田先生、故大浦先生、指導部諸先生の御指導と吟友の激励の賜物と感謝しています。
年はとっても、心は青春。アメリカの詩人サミエル・ウルマンは『青春』という詩の中で、『青春とは人生のある時期ではなく心の持ち方だ』といっています。『優れた創造力 たくましい意志 炎える情熱 こういう様相を青春というのだ』と。『夢や希望を持ち続ける限り若い』ということです。
私も、今後とも吟詠を普及し、一人でも多くの方に、吟詠で健康づくり、心身の鍛錬とストレス解消、歴史を学び生涯学習、漢詩や和歌などを覚えて脳トレ・ボケ防止などの詩吟の効用を大いに普及していく所存です。千里の道も一歩から。缶精流統の吟詠を学び実践し「日に新たに」の心で、夢に向かう決意であります。夢は、一人でも多くの名吟を育てること。