令和4年度入選者寄稿文

横山龍精

クラウン吟詠コンクールに出吟して

第49回クラウン全国吟詠コンクール決戦大会で入賞いただき感謝いたします。
祖父・父と二代にわたって吟詠家ですが、私自身はその姿を見るにとどめていました。吟楽だけでは語れない父の姿を見ていましたので、同じ道を歩むことがためらわれ、でも吟じてみたいと、20代の頃祖父に吟の指導を乞うた時期もありました。僅かな時間でしたが、喜んで「寒梅」を指導してくれたあの時の祖父の存在、その後、どんな時も私をじ、支え、応援してくれる夫と娘たちの存在がなければ、私は今こうして吟楽の道を歩み始めていなかったと思います。長女は物心つく前から祖父の吟詠テープを何度も何度もリクエストレて聴くほどに詩吟が好きで、1歳半の時「王倫に贈る」を口ずさんでいた時などはどひゃあ!と驚いた記憶があります。「ひいじいじがやって、じいじがやってる詩吟を、ママはやらないの?」娘がそう言ってくるのは時間の問題でした。純粋に詩吟を好きだという娘の姿に背中を押され、私がしっかり娘に詩吟の魅力を伝えられるようになりたいと、30歳を過ぎてようやく真剣に吟の勉強をはじめました。これがそのまま「詩吟の楽しさを未来に繋げるけ橋になりたい」という人生の目標になっています。教室に娘を連れていき、床や机に娘を転がしながらとにかく練習。長女の年齢と私の吟歴が一緒に年を重ねて今に至ります。
素晴らしい吟詠家が身近にいたおかげで耳だけは肥えていましたから、練習を重ねるごとに理想と現実のギャップに悶え、自分の吟力に愕然とする日々。稚拙な吟を人様に聞かれるという恐怖からコンクールの出吟もためらわれましたが、次から次へと課題が見えてくるのがありがたく、恥も外聞もなく舞台に立たせていただいております。
私よりも私の可能性をじ応援してくれる家族、会員の皆様、ご指導くださる先生方に、改めて感謝申し上げます。父の背中を追う私を、こどもたちがまた追いつづけてくれるよう。
これからも四苦八苦しながら、歩みを止めず、稽古に励んでまいります。